THINKデジタルのイベントで IBMの新CEOが発表した新戦略

IBMの新CEO アービンド・クリシュナ が、デジタル化されたIBMのイベント「THINK」で新戦略を発表しました。THINKはこれまでラスベガスやサンフランシスコで数万人が参加して開催されるカンファレンスでしたが、今年は新型コロナウイルスの影響でデジタル開催となり、どこからでも参加できるようになりました。以下で後からビデオも視聴できます。

https://www.ibm.com/jp-ja/events/think2020?lnk=jphpv18f1&lnk2=learn

最初の基調講演は「The New Essential Technologies for Business」。以下がそのビデオ配信のページです。

まずアービンドは、今最も重要なテクノロジーはやはり、ハイブリッドクラウドとAIであると話しました。例えば、新型コロナウイルスに負けずサプライチェーンを維持し続けるためには、スピードと柔軟性が必要です。必要な部分をデジタル化してリモートアクセスを可能にしたり、AIで効率化し人の関わり方を減らしたりすることが必要になりなります。ビジネスにはデジタルトランスフォーメーションがますます重要になり、そのためのテクノロジーがさらに重要になると語りました。その一つとして、 ハイブリッドクラウドでは Red Hat OpenShiftによって、ミッションクリティカルなアプリケーションも一度作ればどこでも動かすことができるようになり、スピードの向上や柔軟性の向上が実現できます。

Anthem社のゲストスピーカーが登場し、ヘルスケア業界でもテクノロジーが重要になっていると話しました。Anthem社では、Red Hat OpenShiftによるプラットフォームを構築し、データを管理しAIを活用しています 。その事でビジネスのスピードとスケールの両方の向上を実現しました。様々な企業や団体をつないで、データ・サプライチェーンやAIサプライチェーンとも言えるものを実現したとの事です。その際、IBMがEnd to Endのソリューションを提供してくれたと語りました。

また、いくつかの新しいソリューションも発表されています。Watson AIOpsは、最新のOpenShift上に作られていて、どこのプラットフォームでも動きます。AIは今どの企業でも活用を進めていますが、Watson AIOpsは企業のIT環境の運用をAIで効率化するためのソリューションです。

金融サービス向けパブリック・クラウド(Financial Services-Ready Public Cloud)は、通常のパブリック・クラウドに対し、特に金融業界に必要なセキュリティ、ガバナンス、レジリエンシー、規制対応などを強化したクラウドになります。今後ミッションクリティカルな金融システムをクラウド化していく上で、最適な環境になります。

IBM Cloudサテライトは、パブリック・クラウド、プライベート・クラウドだけでなくエッジも含めた様々な環境でクラウド・ネイティブサービスを実行できます。IBM CloudのPaaSを含めた環境が、どのプラットフォームでも稼働可能になります。オープンソースのKubernetesを活用し、共通のアクセス管理なども提供することで、様々な環境のAPIを容易かつ安全に接続できるようになります。

IBM Application Edge Management として、5G環境も含むエッジ・コンピューティングの管理ソリューションも提供します。お客様が新しいデバイスなどの製品やサービスを提供される場合に有効です。パブリック・クラウド、プライベート・クラウドに加え、エッジもコンテナの展開・管理が可能になります。

また、通信業界向けには、 IBM Telco Network Cloud Managerにより、Red Hat OpenShiftやOpenStackなどを活用したテレコム・ソリューションを提供します

また、IBMはコール・フォー・コードという開発者向けイベントで、世界中の開発者が新型コロナウイルスに貢献できるプログラムを、7月末まで開催しているので、Callforcode.org に参加して欲しいと話しました。

アービンドのセッションでは、特にハイブリッド・クラウドとAIのテクノロジーの重要性を強調しながら、IBMはお客様のハイブリッド・クラウドへのジャニーと、AIへのジャーニーをサポートするとコミット。 さすがCEOになる前に、IBMリサーチとクラウド&コグニティブ事業部を率いていただけあって、テクノロジーで各業界のお客様のこれからのジャーニーに貢献して行きたいというメッセージは迫力がありました。

次のセッションは「Scale Innovation at Speed with Hybrid Cloud」です。こちらは、新しくIBMプレジデントになった、(元Red Hat CEOの) Jim Whitehurstです。

JimはIBMプレジデントとして初めての公へのメッセージでしたが、やはり一度作ったアプリケーションがどこでも動くオープンが価値であり、オープン・ハイブリッド・マルチクラウドが大事であるというメッセージから入りました。

まず、新しい Red Hat マーケットプレースが本日発表され、より使いやすくなったとメッセージしました。しかし、Red Hatはあくまで独立性を維持するとも話しました。IBMとRed Hatのバランスをうまくとりながらのスピーチだったと思います。

印象的だったのは、IBM Cloudは、ベスト・ハイブリッドクラウドになるという話でした。Arvind-Jim体制になってから、ハイブリッド・クラウドへのフォーカスが鮮明になっていると感じます。また、IBM Cloud Pakは、様々なIBMソフトウェアを、OpenShiftも活用し、容易にどこでも動かせる。オンプレでも、IBM ZでもPowerでも、ハイブリッドクラウドとして一緒に動かすことができる。ともメッセージしました。このあたり、IBMプレジデントになったJimならではの話でしたね。

また、IBM Garageによるお客様とのco-creationが重要になり、リモートであっても一緒にデジタルアプリケーションを一緒に構築する事ができると語りました。

エッジ・コンピューティングもハイブリッドクラウドの中で一緒に管理されるようになると、エッジについても語りました。オープンでセキュアな5Gコミュニティを実現するために、IBM Telco Network Cloud Manager を発表するとの事。 このあたりはさすが、通信系に強いRed Hat社の元CEOですね。 次のゲストスピーカーは、以下のVodafoneの方でした。

Voderfoneではここ数年で、ネットワークのエッジ・コンピューターをまずOpenStackで構築し、その後も様々なオープンなテクノロジーを使ってH/Wなども標準化し展開しているそうです。「ユニバーサル・クラウド」として、ネットワークもITやデジタルアプリケーションなども様々なワークロードが稼働するように基盤が作られています。その中で、IOTを重視しているとの事でした。

次に登場したのは、IBM Cloudの女性Fellow、ヒラリー・ハンターです。IBM Public Cloud、オープン、セキュア、エンタープライズ・グレードの3つがポイントとの事。オープンはOpenShiftなどを活用し一度構築したものをどのプラットフォームでも動かせることで、セキュアはお客様のデータはお客様のものとして扱う事をコミット。エンタープライズ・グレードはお客様ごとのミッションクリティカルなアプリもしっかり稼働させることです。

IBM Cloudサテライトは、オープンソースの Kubernetesを活用し、エッジも含めてアプリケーションのデプロイの自動化や運用が可能になります。一つのダッシュボードでエッジも含めた様々なクラウドが一元管理できます。

金融サービス向けパブリック・クラウド(Financial Services-Ready Public Cloud)は、通常のパブリック・クラウドに対し、特に金融業界に必要なセキュリティや規制対応などを強化したクラウドです。クラウドに置いたデータのセキュリティを保持したい時に、お客様のデータをIBM Cloudの管理者もアクセスできない形で保護しますが、そのレベルが「FIPS 140-2, Level 4, EAL 5」という最も厳しい管理レベルの認定を受けています。今後この環境により、以下のような様々な ISVソフトウェアをサポートしていきます。

レポートは以上となりますが、全体の印象としては、よりクラウドのミッション・クリティカルな活用が増えるとともに、金融や通信といったインダストリーそれぞれの特徴をサポートするソリューションが増えたと思います。この流れはこれからさらに加速しますね。単純なクラウド機能比較論争から、各インダストリーで最適なクラウドは何か?といった議論が増えそうです。