彼は IBM Fellowになっても、常に新しいオープンな技術を取り入れ、それを広め、お客様のさらなるデジタル・トランスフォーメーションに貢献し続けたいと考えています。「常に新しい技術を取り入れ応用することで、新しいビジネスの創出やさらなる効率化が可能になります。それをチームで継続していく事でチームの技術力が向上し、お客様により良いソリューションをお届けできます。それができる技術者集団こそがIBMの強みであり、そこからまた新しいFellowが誕生して欲しいと考えています。」技術者の育成こそが世の中の発展に貢献すると彼は考えています。
例えば、オープン基盤の中でコンテナのオープンなテクノロジーを活用することで、その上で構築したコンテナのイメージを他のクラウドに容易に移行する事ができます。これは現在ではコンテナが広く活用されるようになり、AWSやAzure、Google Cloud、IBM Cloudなどどのクラウドでも活用にできるようになり、かつ Red Hat OpenShift Container Platform などにより企業内のオンプレミス環境であっても稼働できるようになったためです。現在ではUNIXマシンやメインフレームでもコンテナが稼働できるようになっているため、ハードウェアやプラットフォームを選ばないオープンなシステム構築が可能になりました。
最初の基調講演は「The New Essential Technologies for Business」。以下がそのビデオ配信のページです。
まずアービンドは、今最も重要なテクノロジーはやはり、ハイブリッドクラウドとAIであると話しました。例えば、新型コロナウイルスに負けずサプライチェーンを維持し続けるためには、スピードと柔軟性が必要です。必要な部分をデジタル化してリモートアクセスを可能にしたり、AIで効率化し人の関わり方を減らしたりすることが必要になりなります。ビジネスにはデジタルトランスフォーメーションがますます重要になり、そのためのテクノロジーがさらに重要になると語りました。その一つとして、 ハイブリッドクラウドでは Red Hat OpenShiftによって、ミッションクリティカルなアプリケーションも一度作ればどこでも動かすことができるようになり、スピードの向上や柔軟性の向上が実現できます。
Anthem社のゲストスピーカーが登場し、ヘルスケア業界でもテクノロジーが重要になっていると話しました。Anthem社では、Red Hat OpenShiftによるプラットフォームを構築し、データを管理しAIを活用しています 。その事でビジネスのスピードとスケールの両方の向上を実現しました。様々な企業や団体をつないで、データ・サプライチェーンやAIサプライチェーンとも言えるものを実現したとの事です。その際、IBMがEnd to Endのソリューションを提供してくれたと語りました。
金融サービス向けパブリック・クラウド(Financial Services-Ready Public Cloud)は、通常のパブリック・クラウドに対し、特に金融業界に必要なセキュリティ、ガバナンス、レジリエンシー、規制対応などを強化したクラウドになります。今後ミッションクリティカルな金融システムをクラウド化していく上で、最適な環境になります。
IBM Cloudサテライトは、パブリック・クラウド、プライベート・クラウドだけでなくエッジも含めた様々な環境でクラウド・ネイティブサービスを実行できます。IBM CloudのPaaSを含めた環境が、どのプラットフォームでも稼働可能になります。オープンソースのKubernetesを活用し、共通のアクセス管理なども提供することで、様々な環境のAPIを容易かつ安全に接続できるようになります。
IBM Application Edge Management として、5G環境も含むエッジ・コンピューティングの管理ソリューションも提供します。お客様が新しいデバイスなどの製品やサービスを提供される場合に有効です。パブリック・クラウド、プライベート・クラウドに加え、エッジもコンテナの展開・管理が可能になります。
また、通信業界向けには、 IBM Telco Network Cloud Managerにより、Red Hat OpenShiftやOpenStackなどを活用したテレコム・ソリューションを提供します
次に登場したのは、IBM Cloudの女性Fellow、ヒラリー・ハンターです。IBM Public Cloud、オープン、セキュア、エンタープライズ・グレードの3つがポイントとの事。オープンはOpenShiftなどを活用し一度構築したものをどのプラットフォームでも動かせることで、セキュアはお客様のデータはお客様のものとして扱う事をコミット。エンタープライズ・グレードはお客様ごとのミッションクリティカルなアプリもしっかり稼働させることです。
IBM Cloudサテライトは、オープンソースの Kubernetesを活用し、エッジも含めてアプリケーションのデプロイの自動化や運用が可能になります。一つのダッシュボードでエッジも含めた様々なクラウドが一元管理できます。
最初の画面の少し下に、上のような四角いメニューが並んでいますので、その中で「Red Hat OpenShift on IBM Cloud」をクリック。すると以下のような画面が表示されます。「Red Hat OpenShift on IBM Cloud」は略して「ROKS (Red Hat OpenShiftの Kubernetes Service)」と呼ばれていますので、以降はROKSとします。
この画面の下方に以下の「Product Tours (製品ツアー)」がありますので、以下の右の「Red Hat OpenShift on IBM Cloud」部分をクリックしてください。 この体験学習ではその ROKS の新規インスタンスをプロビジョニングし、IBM Cloud ポータルを使用してインスタンスを管理する方法を学びます。また OpenShift Web コンソールを使用してアプリケーションを稼働させる手順も体験できます。
次に、インターネットなどの接続先であるMaster service endpointも「Both private & public endpoint (外部アクセス不可のPrivateもインターネットからアクセスできるPublicも両方可)」 などに変えてみます。最終的に以下のようにサーバー構成と金額が表示されますが、この体験学習では課金されませんので(笑)安心して「Create Cluster」をクリックしてサーバーを起動してください。
少し待つと以下の画面が表示されクラスター環境の構成が完了です。これだけの設定で、3つのデータセンター(ゾーン)にそれぞれ、3つのコンテナ実行サーバーであるワーカーノードが稼働し、合計9サーバー使えるようになります。それらが裏で稼働するOpenShiftの管理サーバーで管理されている状態です。真ん中の「Return to main menu」で元のメニュー画像に戻ってください。
メイン・メニュー画像に戻り、右真ん中の「Manage OpenShift」をクリックし上と同様にアクセスすると、以下の「OpenShift Web Console」が表示されます。「Overview」タブで、ClusterのIDや、置かれている複数ゾーン、正常かどうか、CPU/メモリー使用率などが表示されます。「Worker Nodes」タブでは各ワーカーノードの状態リストが表示されます。「Worker Pools」タブでは「Resize worker pool」で容易にワーカーノード数を3から4などに増強する事ができます。「DevOps」タブでは、(ここでは実行できませんが)開発からサーバー運用までをツールでスムーズに実行できるツールチェーンを起動できることも分かります。
再びメイン・メニュー画像に戻り「Deploy an Application」をクリックすると先ほどのOpenShift Web Console が表示されます。そこで「カタログ」を表示すると、下のような「OpenShift Container Platform (OCP)」カタログが表示されます。右上の「Create Project」でプロジェクトをCreateすると右に「myproject」が作成されます。
最後までお付き合いいただけた皆さん、いかがでしたでしょうか?Red Hat OpenShift とそのアプリを IBM Cloudで動かす手順が良く分かりましたよね。
「Red Hat OpenShift on IBM Cloud (ROKS)」はクラウド側がOpenShiftの管理ノードとそれにひも付く各ワーカーノードを管理してくれるいわゆる「マネージド」のサービスであり、上のようにいくつかのボタンのクリックだけで稼働させることができるためすぐに使う事ができます。これがクラウド上のマネージドでなければ、自分でサーバーを購入し、LinuxやOpenShiftを導入し、その上でアプリのイメージを稼働させ・・と動くまでにかなり時間を要してしまいます。スピードが大事なデジタル時代のアプリには、これからは ROKSが必須ですね!
では、いよいよ次は、実際に自分の IBM Cloud アカウントでも無料で OpenShiftを動かしてみましょう。
今回のニューヨーク出張は、「IBM Technology Institute (ITI)」という日本のお客様をニューヨークのIBMの各拠点にご案内し、IBMの今後の戦略や最新のテクノロジーについてご紹介するというプログラムで、それに同行させていただいたものです。初日はこのアーモンクでIBMの今後の戦略についてお伝えするという内容で、この後4階のボードルームに移動してそちらでRed Hat社買収の意義とその後の戦略などの話が米国IBMの首脳陣からありました。そのボードルームは、毎四半期ごとにIBMのGinni Rometty会長から決算発表を実施して世界に配信する由緒ある部屋なのですが、撮影はNGだったため掲載する事はできませんでした。
翌日のツアーは、IBM Researchの総本山である、ヨークタウン (Yorktown)の Thomas J Watson Research Center です。WatsonはもともとIBMの創始者の名前ですが、AIのWatson同様、IBM研究所の総本山の名前もWatsonとなっています。ビルは以下のように3階建ての大きな美しい円筒形になっています。
最初に、このWatson Research Centerの中にあるThink Labで様々なIBM研究所の最新技術を見せていただきました。様々な物質や液体の成分を即座に分析し、ワインまでも真贋をチェックしてくれる”Visualizer”や、最新のBlockchain技術について話を聞けました。また、アメリカ人だけでなく、アイルランドの方など様々な国籍の方が説明してくれたのも印象的でした。
次はこのWatson Research Centerの中のツアーです。2011年にAIブームの火付け役として有名になった、アメリカのJoperdy! というクイズ番組で人間のチャンピオンに初めて勝ったAIのWatsonの実物が置いてあり、当時の様子を詳細に説明してもらえます。
最初は以下のように「Z」の文字が象徴的な IBM Poughkeepsie Executive Briefing Center でIBM Zの最新技術動向について聞き入りました。IBM Z といえばやはり全てのデータを丸ごと暗号化してしまう「全方位暗号化」がポイントですが、その暗号化されたデータが、IBM Z のメインフレームから外に出しても暗号化されたままで、使う時だけ IBM Z が制御して暗号を解けるようになるという最新暗号化技術について聞き、参加者一同なんでそんな事ができるのか?と説明員に詰め寄るようなシーンもありました。
IBM Zの最新技術を聞いた後は、このポケプシーの広大な敷地の大部分を占める、メインフレーム工場の見学をしました。こんなにあるのかと驚くほどの数のメインフレームがマシンルームに並べられており、膨大な数のテストでチェックされていく様子を見る事ができます。一つずつのマシンを一年近くかけてテストしていくそうで、こうやってメインフレームの信頼性が守られているのだと感じました。
4日目は、ニューヨークの wework に移動しての、IBM Garage見学です。日本の IBM Garage も GINZA SIX の wework が拠点ですが、ニューヨークも同様で、ニューヨークの新スポットになりつつある ハドソンヤード (Hadson Yards) 近くのビルの wework でした。
ミーティングルームが、黒フチのガラス張りなのも似ていますね。この中で IBM Garage のリーダーから活動内容を紹介してもらいました。アメリカでも、wework などを使って普通のオフィスから飛び出して、いつもと少し違う環境でリラックスして新しいアイデアを出し合う事が重要視されているとの事でした。
また、そういったクラウドや基幹システムを含むハイブリッド・クラウドのEnd to Endでの構築サービスをIBM Servicesが提供すると発表されました。これは複数クラウド活用における、クラウド戦略のコンサルティングから、クラウドへの移行、クラウド開発、アーキテクチャー構築、統合管理などを含みます。また、これらクラウドを活用したイノベーションの共創(co-creation)をIBM Garageとして提供します。これらはまさに日本では私自身のミッションとなります。
ハイブリッド・クラウド実現に欠かせないのは、IBMとRed Hat社の協業です。上の写真のように、Red Hat CEOのジム・ホワイトハーストさんも登壇し力強く協業について語っていただきました。特にこれからは、アプリがハイブリッド・クラウドのどこでも動くようになるコンテナとKubernetesのテクノロジーが重要になるとのこと。複数のクラウドやオンプレの全体を効率よく活用していくためには、オープンなテクノロジーが必須になりますよね。
上記にありますように、クラウド・ネイティブなアプリケーションとは主に、Dockerなどの「コンテナ」化されており、Kubernetesなどの「動的オーケストレーション」技術で動的に構成される、「マイクロサービス」化されたアプリケーションが典型的と言われています。これはCNCFホームページの「What is CNCF?」にも書かれています。これらは現在のクラウドを支える主要な技術なので後でじっくり記述します。
その前に大切なのは、「What is Cloud Native?」にあるように、これらのクラウド・ネイティブ技術は、いわゆるパブリックのクラウドのためだけにあるわけではないという事です。クラウド・ネイティブなのにクラウドだけでないというのはやや逆説的ですが、コンテナやオーケストレーションはサーバーを迅速かつ柔軟に構成するためのたいへん優れた技術であるため、パブリック・クラウドだけでなく、オンプレのプライベート・クラウドでの活用も盛んになっています。オンプレであっても、クラウド技術を活用したいというユーザーが増えているためです。その事で、今はパブリック・クラウドでは不安があるアプリケーションも、まずはオンプレのプライベート・クラウドで稼働させてから後からそのコンテナをパブリックにそのまま展開する・・・といった自由な選択が後から可能になります。
6/11-12に IBM Think の日本のイベントが品川で開催されました。印象的だったのは、いよいよ AI や IoT といった最新テクノロジーが本格的に使われ始めたということ。一年前とはレベルの異なる、本格的な協業が進んでいます。一番印象的だったのは、安川電機さんのロボットとIBM Watson のコラボ。まずは以下のビデオを見てください。
なんと、銀行の窓口でハンコを押すロボットだそうです。クラウド上では IBM Watson が動いてIoTで上がってきたデータを分析します。が、銀行の窓口では規則でどうしてもハンコが必要な部分も残っており、窓口業務を効率化するために、プリントアウトされた紙をロボットが自ら取ってハンコを3回も押して箱にしまうという、この秀逸さ。まさに、物理的なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、人の作業のデジタル化もここまでくると立派ですね!