IBM Think 2021の デジタル・イベントで発表されたIBMの新戦略

昨年に引き続き IBMのThinkカンファレンスが以下でデジタル開催されています。2021年の戦略は、2つのキー・テクノロジーである「ハイブリッドクラウド」と「AI」に重点を置いているのは変わりませんが、特に様々なソリューションや製品に、AIを活用したインテリジェントな機能を組み込んでいく方向性が鮮明になりました。

https://www.ibm.com/ibm/jp/ja/events/think/

IBMのCEO Arvind Krishna は冒頭のキーノートスピーチで、2025年までにデータは 60%も増える。そういったデータをいかに AI で活用していくかが重要であると話しています。特に企業のビジネス・プロセスの中にAIを組み込み、インテリジェント化し、スピードと効率を上げる事がこのコロナ禍の中で重要性が増してきているとの事。

IBMのAIに関する調査 「Global AI Adoption Index 2021」によると、調査対象となったITエンジニアの 43%が、自社においてAIの導入が加速していると回答しています。また 50%人たちは、AIによってさらなるプロセスの自動化ができると回答しているそうです。

これらの理由により、IBMは今回のイベントでも以下のような多くの製品やテクノロジーで、AIを活用したインテリジェントの提供を開始しています。

  • Cloud Pak for Data:  データがどこにあっても一元的にアクセスするために、AutoSQLによりデータを移動せずにオンプレミスや複数クラウドを含むハイブリッド・クラウド環境でのシームレスなデータアクセスを実現
  • Maxmo Mobile:  資産管理で良く使われるMaximoにMobile機能を追加。手元のモバイルで複雑な問題の解決のための情報に容易にアクセスするために、Watson AI を活用。AIによるインテリジェント・ワークフローを実現。
  • Project CodeNet:  コード変換のためのオープンソース・プロジェクトで、5億行のプログラムを学習したことで、55以上のプログラム言語を理解し、プログラムを他の言語に変換したり分析したりをAIがサポート。
  • Mono2Micro:  AIを活用して既存のモノリシックなプログラムをマイクロサービスに変換するための分析をするMono2Microツールが、WebSphere Hybrid Editionに同梱されました。
  • Watson Orchestrate:  ビジネス系の人もチャットボットなどAIを活用し、インタラクティブに業務が進められます。Slackなどから自然言語で多数のビジネスシステムに接続しながらデータのインプットや取得・分析などが可能になります。

最後の Watson Orchestrateは今回初お目見えの製品ですね。以下のようにイメージが紹介されました。SlackなどでWatson Orchestrateとチャットをしながら、必要なデータを取得したりインプットしたりできます。

Slackから「SalesForceで、提案フェーズになっている私の案件全て見せて」と依頼して表示してもらったり、「それをPDF化してダウンロードして」とWatsonに伝えてPDFを取得したり、そのようなデモが展開されました。AIが自分に必要なシステムをあらかじめ理解していて、こういうデータ持ってきてとか伝えるとそのデータがもらえるとは仕事が楽になりますね。(そういうデータを自分で取得するのにいつも時間がかかっているので・・)

ゲスト・スピーカーは、まず以下のSiemens社のTonyさんが登場されました。デジタル・ツインで実際のフィジカルなシステムに対してデジタルなモデルでシミュレーションして確認し、確信を得る事で意思決定をしていると話されていました。Closed Loop Digital Twinと呼ばれていましたが、製造(Industrial) IoTにより機器をモニターし、そこから得られたデータで Feedback Loopを回すことで確認する。それをAgileに回すことでプロセス全体を柔軟に改善していくのだとお話しいただきました。

Red Hatを活用し基盤をオープンにした上で、MaximoとTeam Centerでライフサイクル管理を効率化しているとの事。オープンなハイブリッドクラウド基盤でリアルタイムなデータ活用を実現しているそうです。AIでメンテナンス・ルーチンを予測可能にするなどして、プロセス全体の自動化をさらに進めていくとも。振動データを取り込んで分析する事で、予測なども実現されているようですね。最終的には、他社も含めてオープンなハイブリッドクラウドでつなげたエコシステムを作り、デジタル・エンタープライズを構築する事が目標だそうです。

次のゲストは、CVSヘルスCEOのカレンさん。新型コロナ対応で、2200万回の検査や、一日30万件のワクチン予約に対応するために、デジタルなインテリジェント・プラットフォームを構築した事が役立ったと話してくださいました。医療の世界でも、デジタルがゲーム・チェンジャーになるとの事です。

Arvind CEOの最後のゲストは、Salesforce社のBretさんでした。このコロナ禍で10年分のデジタル・トランスフォーメーションが13ヶ月で起こったと話されていたのが印象出来でした。そういった事を実現するのが、ハイブリッドクラウドとAIだと。このコロナ禍で学んだ良い点である、リモートワークやスピード、アジリティを今後に生かしていく事が大事だと話していただきました。

IBMの新しいストラテジー・リーダーの Rogerのセッションでは、世界の企業システムはまだ25%しかクラウドに移行されていない(昨年は20%)。従ってこれから徐々にクラウドへの移行が進むが、しばらくは両方が共存するハイブリッドクラウドになるという話がありました。世界的にどの企業も当面はパブリック・クラウドとオンプレミスの共存になるため、それをどう進めていくかの戦略が大事との事でした。

ハイブリッドクラウドの、従来型の単なるクラウドに対する特徴としては、オープンソースを取り込んだオープンな環境になるという点と、パブリッククラウドとオンプレミスなど複数データセンターの接続になる点。2つ以上のクラウドの活用が通常になり、クラウドネイティブでアジャイルかつ場所を問わず動くアプリが増える点。コンテナ上のAIがいたる所で動きデータを抽出し差別化を目指せる点などがあげられています。

このような特徴をうまく生かすと、従来型の単なるクラウドに比べると、ハイブリッドクラウドはトータルで 2.5倍の価値(ROI)があるとの事です。

これらの特徴を生かせる ハイブリッドクラウドのアーキテクチャーが、以下のように提示されました。特に、どのクラウドやオンプレミスでも動く Red Hat OpenShiftなどを活用した オープンなハイブリッドクラウド・プラットフォームの上に、ハイブリッドクラウド・ソフトウェアとして AIによるインテリジェントな機能を盛り込んだ、Cloud Pak for Dataや、Cloud Pak for Automationなどを活用する事でこれらの価値を最大限にできるとメッセージしていました。

これまでの AIによるチャットボットや、クラウド上の情報提供システムから一歩踏み込んで、いよいよ企業における基幹業務も含めた本格的なデジタル・トランスフォーメーションが進んできていると感じました。IBMは企業のビジネス全体やシステム全体に対し、ハイブリッドクラウド上で本格的なAIを適用する事でスピード向上と効率化を実現するところに本気でアプローチしていく、というのがメッセージと理解しました。